
心に響く言葉・第2弾
言葉の話、第二弾です。
今回は、本の中から。
『要はいう人の心しだいであったかくなるのが言葉じゃあありませんか。』
これは、北村薫著『夜の蝉』の中で出てきた言葉です。
読んだ時、なんてあったかい言葉だろうと思いました。
すーっと、心に優しく沁みてくるんです。
「人の心しだいであったかくなるのが言葉」。その通りだと思いました。
北村薫さんの文章は、すごく優しく、美しく、穏やかで、読んでいると本当にほっとします。
人を見る目が温かく、良いところも悪いところも全部受け入れて、そっと抱きしめてくれる、
そんな文章を書く作家さんです。
大自然の中の、澄んだ湖を見ているような・・・
音楽に例えるなら、パッヘルベルのカノン、といったところでしょうか。
これからもちょくちょく話題にすると思うので、北村薫さんのご紹介もしたいと思います。
作家 北村薫について
経歴
——————〔北村亭〕(北村薫ファンサイト)より抜粋——————
早稲田大学第一文学部卒。学生時代からミステリ関係者との交遊を深め、
関係者の間でその本格ミステリの愛好ぶりが知られていた。
もともとは教職についていたが、当時東京創元社の編集者であった戸川安宣氏の勧めにより執筆活動を開始。
1989年に『空飛ぶ馬』を発表し、作家としての第一歩を踏み出す。
当初は専業作家になるつもりがなく、本名・性別を含むいっさいのプロフィールを明かさない「覆面作家」としてのデビューであった。
1991年、短編作品集『夜の蝉』によって第44回日本推理作家協会賞(連作短篇集賞)を受賞し、覆面作家業にピリオドを打つ。
以降、諸事情あって教職を辞し、専業作家となる。
現在では、小説家として文芸誌・新聞等で小説を発表。
また無類の本格ミステリ愛好家・読書家として新聞、雑誌等へ論説・エッセイを寄稿し、アンソロジー編纂や、講演、対談などの活動も盛ん。
また2005年度から2006年度まで、母校早稲田大学にて、客員教授として創作指導・文芸演習のクラスを担当した。
執筆活動の中でも、小説作品への評価は非常に高く、直木三十五賞には最終候補に6度挙げられ、
6度目の第141回(2009年)『鷺と雪』(文藝春秋刊)にて受賞。
2006年に『ニッポン硬貨の謎』で第6回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を受賞。
また山本周五郎賞などいくつかの著名文学賞の選考委員も務める。
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作風
分類としては「本格ミステリ」の作家ですが、敢えて大きな事件を描かず、
平凡な営みに重きを置くことで心の揺れを描写する作品が多いです。
私は推理小説はあまり読まないのですが、
むやみに血なまぐさい殺人事件が起きたり、
唐突なトリックでこじつけたりということは一切なく、
緻密な伏線と謎解きの鮮やかさ、
そしてなにより、文章が軽やかで美しい北村薫さんの作品はとても好きで、
小説に関しては、ほとんど読んでしまったほどです。
落語がお好きということで、ところどころにユーモアあふれる表現が散りばめられているのも魅力的です。
言葉、もうひとつ。
この『夜の蝉』は《私と円紫さん》シリーズの2つ目。
女子大生「私」の日常にふっと浮かぶ謎を、噺家春桜亭円紫が解き明かす。
謎解きの鮮やかさに感心すると同時に、登場人物たちの人を見る目の温かさが心に沁みます。
最後にもう一つ、『夜の蝉』から。
『水鳥の脚使いではありませんが、内に何かを秘めない人はいません。
何をどれぐらい表にし裏にするかは人によって違います。(中略)
ある意味では、その割合こそが、動かしようのないその人らしさをつくるのでしょう。』