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コロナ禍と適応
臨床の現場で働いていて、気づくこと。
4月に緊急事態宣言が出され、日本中で自粛ムードが高まりました。
不要不急の外出はいけないこととされ、ちょっとした買い物すら、
言い訳をしながらするような空気になりました。
最近では、重症者や死亡者が極端には増えておらず、病床数もまだ余裕があることから、
世の人々の行動も緩んできているのかなという印象ではありますが。
外向性と内向性 - ユング心理学・性格心理学
ユング心理学では、外向性・内向性という有名な概念があります。
外向性とは、エネルギーや関心が外の出来事や人に向かうこと、
内向性とは、エネルギーや関心が、自分の内側で生じるものに向かうこと
人はこのどちらの要素も持っていますが、簡単に言えば、
前者が強ければ「外向型」「外向的な人」、後者が強ければ「内向型」「内向的な人」と分類されます。
コロナ禍の逆転現象
興味深いのはこの数ヵ月間、
普段は外の環境に適応的で、アクティブで、比較的カウンセリングにも縁が遠い(場合が多い)外向的な人たちが、抑うつ的になっている様子が見られる一方で、
外で人と関わると傷つきやすく、カウンセリングに親和性が高い人たちが、学校や職場のオンライン化により生き生きと能力を発揮するという現象を目の当たりにしました。
まぁ、当然そうですよね、と思うのですが。
コロナをきっかけに、今後は人々が自分の最も合う形で世界と関わっていく、その選択の幅が広がっていくのかな、
と思いながら、この数ヵ月世の中の動きを見ていたのですが、
なかなかそう単純なものではないようで。
日を追うごとに通勤客で電車が混み、今では通常通りの満員電車。
リモートワークをそのまま取り入れた職場というのは本当に少ないのだろうと思いました。
もちろん、仕事内容的にリモートで行うことが難しい職場もあると思いますが、
価値観を変えられず、というところもあるのだろうと思います。
ちなみに大学の多くは、一部(対面が必須の授業)を除いてオンライン授業継続としているところも多いようです。
世の中の価値観
しかし、不思議ですよね。
内向的な人と外向的な人って統計的には1対1で存在しているはずなのに、
「外に出られないなんてひどい、かわいそう」「なんで大学生だけ学校に行っちゃいけないんだ!」という声がよく聞こえてきます。
この主張は、何の問題もないですが、
これまで、「外に出なきゃいけないなんてひどい、かわいそう」
「なんでわざわざ学校に行かなきゃいけないんだ、オンラインでやればいいじゃないか」なんてほとんど言われなかったのに、と思ってしまいます。
技術的に無理だったから、というだけではないはずです。
これだけ、個人個人に合わせた生き方を、と叫ばれるようになった現代で、
今後、コロナが落ち着いて、通常どおりに戻すとなったときに、この叫びは有効になるんでしょうか…。
いかにこの世の中が、外向的な価値観で動いているか、ということを改めて突き付けられた気がしました。